情報サービス論(5706)レポート 近大通信教育部図書館司書コース

【情報サービス論レポート設題】

図書館利用教育の実施のために必要な環境整備にはどのようなものがあるか、それぞれについて簡潔に述べるとともに、図書館利用教育をさらに浸透させるためには、どのような工夫が必要か、最近の動向も踏まえ、貴方自身の考え方を含め論じてください。

【情報サービス論レポート】

1.はじめに
 図書館が提供する情報サービスの支柱、レファレンス業務における重要な業務の一つに図書館利用教育がある。大量で玉石混合の情報が流通する社会で、適切な情報をいち早く効率的に入手し、情報を選択する能力は極めて重要である。図書館利用教育は、その雑多な情報の中から、一定の探索法にて効果的に調査し、必要で最も適した情報を最短で選択する情報のリストラを行う能力を教育し、膨大な情報を捌くことが求められる現代社会において、自立的な図書館利用者を効率的に育てることが求められている。

2.図書館利用教育の実施に必要な環境設備
 まずは、組織的に行われることが最も大切である。個人で行うのではなく、組織的、制度的に図書館活動を行い、人が入れ替わったとしても質を落とすことなく続けられるサービス体制を作ることが不可欠である。また、積極的な活動をするには当然のこと資金が必要である。予算確保においても、業務が個人的ではなく、組織的、制度的に行われなければ、必要な資金を調達することは難しいだろう。
 組織的に活動する場合、利用教育の実施の内容に個人差が出ないよう、標準マニュアルに沿って実施されるべきである。そしてそのマニュアルに沿ってロールプレイングなどを行い研修し、図書館員全員が同じサービスを提供できるようになるべきである。
 次に、レファレンスツールの整備が大事である。利用教育を行っても実際にそれを利用できないとなれば、必要な効果を上げられない。予算が少ない図書館では資料の整備が難しいこともあるかもしれないが、資料の整備よりも先に利用教育を行うことにより、どの資料が必要かが明確になり、利用者に資料不足の実態を知ってもらうことにより協力を得られる場合もある。また、近隣の公共図書館と相互協力ができる場合は、そういったサービスもあることを教えることもできる。
 そして、映像メディア活用の環境整備も必要である。利用者はテレビ、DVD等の映像、音声メディアに親しみが深く、それを活用するところが多い。しかし、自前で作成するには莫大な制作費がかかるということを配慮して、日本図書館協会による「図書館の達人シリーズ」などの市販のDVDを購入しコストを削減しながら利用教育を行うなどしてきたが、近年ではプレゼンソフトや、ライブ動画配信なども普及してきたため、これらの環境の整備も必要になってきている。
 また、教育機関における利用教育は、図書館利用を上手に行うことによって、教育効果を高めることができるという教育支援である。学生への効果的な利用教育の実現には、図書館員は教員との連携をはかり、協力する体制を作ることにより良い利用教育を行うことができる。

3.図書館利用教育を浸透させるための工夫
 情報社会において文献をうまく探すには、まず調査方法を学ぶ、そして情報の選択能力を持つことが求められる。そのためには主題知識をある程度培う必要があることを配慮して、今後の利用教育を検討する必要がある。
 文献調査法を会得しなければならないのは必要不可欠だが、日本ではこれを教えられる教員は少なく、また日本の教育が知識注入型なため、小中高の間にこれを身につける機会が失われている。大学に入るまで文献調査法を知る機会がないままであるという実態を知り、調査のためのレファレンスツールを教え指導するのはとても重要だと認識し取り組む必要がある。またそのためには、教員養成のあり方や、生徒を指導するカリキュラムの再検討の必要がある。
 もちろん学生だけではなく、生涯学習がさけばれる昨今において、どんな人にとっても情報は大切なものである。法律や医療情報などを自分で獲得し、課題を解決する力が必要とされる時代であり、図書館はそれを支援するサービスが求められる。(注1、92P)すべての人が文献調査法を知り利用できるために、図書館員、教員にとどまらず、社会全体的に取り組むべき政策とすべきである。例えば、大学図書館や公共図書館でも文献調査法に関する利用教育を一般の人に開放したり、大学での公開講座などで調査法に関する講座を開催したりするべきである。
 また、高度情報化社会時代が進むにつれ情報サービスは多様化し、図書館のサービス内容も変化に対応しなくてはならず、利用教育の内容もブラッシュアップし、多くの人が自立して利用できるようにしていくことが必要である。

4.終わりに
 膨大な情報で溺れないために、文献調査法を知り、それにより素早く適切で正確な情報を知ることができることは、学生が勉強する時だけではなく、誰もが人生において大変なメリットとなりうる。日本は学生のうちにこれらを知る機会が少ないと知り非常に損をしていると感じたので、利用教育の浸透にさらなる踏み込んだ全社会的な政策が必要だと考える。

参考文献
毛利 和弘著『情報サービス論 改訂版』2019,近畿大学教育通信部
日本図書館協会図書館利用教育委員会編『情報リテラシー教育の実践』2010,日本図書館協会
(注1)竹之内 禎・ほか編『ベーシック司書講座・図書館の基礎と展望4 情報サービス論』2013,学文社

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA