図書館情報資源概論(5709)レポート 近大通信教育部図書館司書コース
こちらのレポートは返却が遅いと書いてある方もいらっしゃいましたが、
私の場合は年末年始挟んで2週間くらいで戻ってきました。
そんなにとっつきにくい話題ではないのでわりと書きやすかったと思います。
【図書館情報資源概論レポート設題】
公共図書館が地域資料を収集するのはなぜかを考え、地域資料の特性と今日の課題としての地域資料のデジタルアーカイブ化について論じなさい
図書館情報資源概論レポート
1.はじめに
図書館は、人類が知識や情報を得て共有するための本や資料などの情報媒体を選定、収集し、正しく長く保存し、人々に提供するための施設であり、古くからその社会的責任を担ってきた。近年、私たちの暮らす環境は大きく変化しており、コンピュータはもちろん、スマートフォン等のデバイスや、通信ネットワークが発展し急速に普及する中で、以前より図書館で扱っていた本や資料などの伝統的な情報資源に加えて、情報が電子化された電子資料やさらに物理的媒体を伴わないネットワーク情報資源をも取り扱うように求められている。本レポートでは、そのネットワーク情報資源について、さらに図書館における今後の収集や課題について考察する。
2.ネットワーク情報資源とは何か
ネットワーク情報資源とは、電子化された情報資源の中でも記録媒体には収めずインターネット等通信ネットワークを介して人々に提供される様々な情報資源のことである。具体的には、オンラインデータベース、電子ジャーナル、電子書籍、音声コンテンツ、動画コンテンツ等が挙げられる。Apple、Amazon、Google等の世界的大企業が2010年より電子書籍を販売したのを皮切りに次々とデジタルコンテンツを販売するようになり、私たちの生活の中でも身近な存在となった。
ネットワーク情報資源の特徴は、ソフトウェアとそれを動かすためのハードウェアすなわち、パソコン、タブレット、スマートフォンなどが必要なことである。ソフトウェアは、情報をデジタルに変換した方法をファイル形式と呼ぶが、そのファイル形式を解釈し、情報を私たちが見たり聴いたりできる状態に変換しなおして提供することに必要である。ネットワーク情報資源の多くはWorld Wide Webを介しており、Webブラウザがあれば閲覧可能なことも多いが、専用のハードウェアの製造が中止になったり、新しいシステムに対応したソフトウェアに更新できない場合、利用ができなくなる場合があることが問題として挙げられる。また、情報を多くの人に即時に届けられる速報性や、検索が伝統的な資料と比べて圧倒的に長けている、情報の更新や削除が可能といった特徴もあるが、通信ネットワークを介して提供される情報なので、当然そのネットワークに不備が起こると情報の閲覧、検索ができなくなったり、データが消失するなどという弱点もある。
3.公共図書館の提供するネットワーク情報資源について
公共図書館におけるネットワーク情報資源の提供は、まずは国立国会図書館デジタルコレクションがある。平成21年の著作権法第31条第2項の新設により、国立国会図書館が所蔵する資料の保存を、それまでのマイクロフィルム等への保存ではなくデジタル化が可能となり進められてきた。それにより、デジタル化した資料をデータベース上で検索し閲覧することが可能となったのである。また国立国会図書館は、様々な理由で公共図書館等が入手困難な資料について、承認を受けた公共図書館や大学図書館がインターネットを介して閲覧、複写できる、図書館向けデジタル化資料送信サービスも提供している。
図書館における電子書籍サービスの提供はというと、最初は特定の電子書籍を館内で自由に読めるサービスや、電子書籍用デバイスごと電子書籍を貸し出すサービスなどが行われていたが、コンテンツの充実さに欠けることや、通信環境の整備、性能の良い電子書籍用の端末の必要性など様々な障壁により、なかなかサービスとして根付かなかった中、近年の図書館の電子書籍サービスは、ネットワークを介した電子書籍の貸出が主流となっている。2007年、東京都千代田区立図書館が初めてインターネットを通じて電子書籍の貸出、閲覧のサービス行い、その後各地の図書館で同様のサービスを導入するところが増えている。その他にも音楽コンテンツにおいては、既存の音楽配信サービスのアクセス権を公共図書館が購入し、利用者にサービス使用可能のIDを期限付きで貸し出すようなサービスの提供も広がっている。また、自館の持つ資料をデジタル化し、電子図書館サービス、デジタルア、ーカイブ等を進めて、ネット上で検索、閲覧できるようにし、文化的情報資源を収集して保存し提供するという使命を果たしている図書館も多くみられる。
4.今後の収集の在り方や課題
図書館は先に述べたように人類が知識や情報を得て共有するための情報資料を人々に提供するための施設であり、人々の知る自由を保障するという社会的責任を担っているため、以前からある有形の情報資源に加えて、ネットワーク情報資源をも必要であれば収集すべきだ。しかし無形であるために所蔵するという概念が持ちづらく会計上に問題が生じる、資源が際限ない、情報が更新され変化する場合がある、著作権処理が困難等々の特有の課題もある。
5.終わりに
様々な課題もあるが、公共図書館には利用者や、その図書館の所在する地域や特性に必要とされるネットワーク情報資源を取り扱うことが求められるので、ニーズに合うようにサービスを進化させていかなくてはならない。
【参考文献】
森美由紀『図書館情報資源概論』2016、近畿大学通信教育部
藤田岳久・ほか編『ベーシック司書講座・図書館の基礎と展望8 図書館情報資源概論』2016、学分社